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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群

 図書館から帰ってきて、夕飯前に済ませてしまおうと向かったシャワー室から、ちょうど出てきた司先輩。
「おう。かんなちゃん」
「こんばんは」
 そのまま過ぎようとしたところ、声をかけられる。
「夏休み楽しい?」
「へっ、楽しいです! すっごく」
「そか。良かった」
 まだなにか言いたそうな顔を手の甲で擦り、明るい声で続けた。
「夕飯は油淋鶏に冷やし中華だから、師匠の仕込みは美味しいよ」
「最高ですね」
「じゃあ、また」
 何を言いかけてたんでしょう。
 夕飯の話をしたいんじゃないでしょうに。
 でも入学式から先輩の中では話す頻度の低い司に、それ以上深掘りは出来なかった。

 シャワー室に入ると、ルカが着替えていたところだった。
 久しぶりに見たものの、あまりに整ったプロポーションについ目線が固まってしまう。
「あ、こんばんは。松ちゃん」
「こ、こんばんは」
 タンクトップにオーバーサイズのパーカーを羽織るだけで、雑誌の表紙のように際立つ。
「廊下で司先輩と話してませんでした?」
「はい、そこで鉢合わせて」
 フッと頬を緩ませ、目線を回す。
「珍しい。食堂以外じゃ声掛けないのに」
「なにか質問があるようだったんですが……」
「松ちゃんに?」
「多分」
 ルカは髪にオイルを軽く撫でつけて、フワフワと整えながらこちらを見た。
「好きな人の話じゃないですか」
「えっ」
 きっとそうだと思っていたのに。
 言葉に出されると動揺してしまう。
「だって清龍先輩と、岳斗先輩とトリオで仲良いですからね。気にはしてますよ。毎日のようにデートされてるんですから」
「ルッ、ルカさん」
「あら、一応見られてますよ。蘭先輩とか高笑いしてましたし」
 それもそれで頭痛いですね。
 上級生に、しかも岳斗と同い年の同性に面白がって見守られているのはいい気分じゃない。
 ルカが荷物をまとめて扉に近づく。
 シャワーの音が聞こえないので、他に入ってる人はいないようだ。
 足を止めたルカが振り返る。
「私でよければ、いつでも相談してくださいね」
「えっ、相談って」
「美弥先輩には御巫姉妹が迷惑かけましたから……せめて、ねえ」
 言い返す暇も与えずにルカは出ていった。
 キスフレの存在を思い出して、ついしゃがみ込んでしまう。

 夏休みに入ってから……
 美弥先輩と話してない。
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