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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群
木陰をなるべく選んで踏み進めながら、過去問で埋め尽くされた頭に邪念がよぎる。
付き合ったんかな。
付き合ったんだろうな。
岳斗だぞ。
断る理由がない。
ブンブンと手を振って邪念を退ける。
思う資格もない。
あまりにも烏滸がましい。
このまま神聖視して遠巻きに見てるのがいい。
玄関にたどり着き、ため息をついて靴を脱ぐ。
そろそろ穴の空いたサンダルがいい季節か。
「じゃあまた夕食で」
「今日もありがとな、司」
「ええ? まだ付き合ってあげてると思ってんの? 自主的だから気にしないで」
心底驚いた声で立ち止まらずに。
脱力するよ、全く。
シャワー室に直行した司を横目に三階に上がる。
ロッカーに着替えを置く趣味はない。
トントントン。
足音に耳を済ませて歩く。
そうだ。
不満は無いはずだ。
三年間見ていてわかる。
岳斗は彼女を不幸にするタイプじゃない。
普段はヘラヘラしてるが、尽くすやつだし。
入れ込んで受験失敗のヘマもしないはず。
なのに。
部屋の前にたどり着き、重い足を揃えて床を見る。
どうして。
鍵を取りだして、自室を開ける。
そうか。
見慣れた部屋に少しだけ肩の力が落ちていく。
わかった。
勉強道具の入ったカバンを椅子の背にかけて、靴下を脱ぎ捨て、ベルトを外してベッドに腰掛ける。
性欲だ。
横になって天井の模様に視線を這わす。
性の話をしてしまっていたから。
カーテンからこぼれる夕日に空腹をおぼえる。
その日は遠くないんだ。
弾かれたように飛び起きて、グッと下腹部を力強く押さえ込む。
「かんなが……岳斗と……」
最低な想像が過ぎる前に意識を他に向けようとするが手遅れだった。
あの日見た裸体が妄想の中で成熟する。
恐怖におののく顔が困惑し、それから高く甘い声に包まれていく。
「ダメだって。やめろ、やめろ今すぐ」
こんなの自虐でしかないのに。
映像が止まらない。
岳斗の大きな体が、あの細い少女にかぶさる。
白いお腹を撫でて、太ももの裏に手をかける。
恥ずかしさと喜びが入り交じった笑顔で、静かに受け入れる。
「やめろって!」
ズキっと体の奥の奥から激痛がして、もう一度ベッドに突っ伏した。
「無理かもしれねえ……」
暗い声は壁に吸い込まれる。
階下の岳斗には届かない。