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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群
映画が終わり、エンドロールが流れてる。
「あ、この曲聞いたことある」
あまりに普通の会話のように言ってしまったから、陸の顔から緊張が抜け切って破顔した。
「なんすか、それ」
「誰の歌だっけね。カラオケ行きたいなあ。しばらく行ってないし、朝カラでもするかね」
「え、俺上手いよ」
「誘ってないよ」
「多分惚れてくれると思うんで行きましょ」
余裕出てきたねえ。
そうそう。
こういう軽口が言い合えるのが陸なの。
フフっと笑いあって、同時に額をポリポリ掻く。
「気まずーい」
「それ口に出すか?」
「いいじゃんね。ボクしかいないんだし。今度カラオケ誘ってね。今のボクなら泣かせるの簡単だよ」
「バカにしてるだろ」
「ボクはタイム・トゥ・セイ・グッバイをアンサーソングにしてあげよう」
「あ、バカにしてるわ」
そうだよ。
陸が単純バカなことくらい去年から知ってる。
エリのことを持ち出してからボクを口説こうなんて、不器用にも程がある。
どこの世界に元カノ話したあとで付き合うふたりがいるって言うんだい。
ああ、不器用。
「明日予定入ってる?」
「いま入りそう」
「じゃあ十時に迎え行くんで、カラオケ行きましょ」
「しょうがないからいいよ」
「あざっす」
扉を閉めるまで、陸は自分のジャージの裾をギュッと握り締めていた。
部屋に着いて枕につっ伏す。
疲れたなあ。
今夜なんて聞いてないよ。
関係性が変わる日はどっと疲れる。
脚をパタパタとバタ足すると、疲れが爪先から溶けだして消えていく。
「陸かあ……」
もちろん恋愛対象に入ったことは無い。
そもそもかんなしか眼中に無かった。
いや、アリスものしかかっては来ていた。
このボクを手玉に取る悪女。
ちょっと遊ばれるのも楽しそうだし。
確実にえろそうだし。
「でも、陸かあ」
同じ言葉を出してしまって、自嘲する。
意識しまくりじゃんね。
この学園に入ってから男は四人、女は二人振ったというのに。
後輩男子相手に今更ざわめいてる。
かんな。
毎日のように岳斗と出かけてる、かんな。
ボクには一言も相談なしかい。
そんなに邪険にされるとさ。
そろそろ耐え難いよ。
アリスのせいで学期末はあまり会えなかったし。
目の前で奪われていくのを見る趣味もない。
「あー……疲れたニャア」