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もうLOVEっ!ハニー!
第15章 何も叶えぬ流星群
学園の門を出てから、耐えきれずに口を開く。
「別に気にすることないですよ」
「ん? 何に」
「ガク先輩、かんなと付き合ってんでしょ」
最初からその話をしたいだろうに、とぼけた顔に頭の後ろがピリリと痛む。
「ああ、まだやで」
「えっ。じゃあなんで」
「俺がしつこく誘っとんの。その話したくて呼び止めたんちゃうんやけど」
信号待ちで車の列を眺めながら、眉をひそめる。
「じゃあ、なんですか」
「八月最初の土曜暇?」
「場合によっては」
「隆人に許可もろたし、天体観測企画してん。暇やったらマリケンも誘っといて」
青信号になっても足が動かず、岳斗が振り返る。
なんだそれ。
通行人の邪魔にならぬよう戻ってきて、信号の真下に避難させられる。
「どした」
「いや、え……どういうつもりで言ってんすか」
「村山とつばるの一件で、寮の空気キショいままやろ。受験に集中して無視してもええけど、風通し良うなるイベント企画しよて、隆人と」
「いや……ああ、そうですか。俺は欠席します 」
「つれないなあ」
ああ、腹立つ。
この人に悪意は無い。
いつだって無い。
それでもここまで逆撫でさせられて、黙っていることなんてできない。
「新作アルバム買いに行こうと思ったんですけど、ちょっとカフェ付き合ってくださいよ」
「ええよ」
即答。
かんなと入った喫茶店に足を向けた。
閉店時間まで後一時間弱。
店内は二組の夫婦だけだった。
なるべく奥の席をリクエストする。
アイスコーヒーをふたつ頼んで、目の前の男に何から話そうか思案する。
「まず、最初に……俺はかんなに告白済みです」
岳斗が腕を組んでテーブルに身を預けて頷いた。
「返事は貰ってませんが、俺から取り下げた形になってます。だから、同じ場に行くのは避けたいです」
「……そか。それでさっきの態度か」
流石にあの数秒でも何かあったのかは察しただろう。
「いやー……改めて聞いてまうと凄いな」
「何がですか」
ちょうどアイスコーヒーが運ばれてきて、会話が途切れてしまう。
ストローを意味無く回しながら、岳斗は言葉を選ぶように呟いた。
「安心できへんな。あの子相手やと」
「まあ、俺より美弥先輩と話した方がいいと思いますけどね」
二人の仲の良さを思ってこその言葉だったが、岳斗は笑って首を振る。
「美弥はかんなから聞きたいやろ」