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もうLOVEっ!ハニー!
第16章 台風の目の中

「あん時、お前かんなに見覚えある反応やったな」
 口が乾く。
 勘違いであってくれと。
 目の前の友情を気色悪いものに変化させないでくれと、心の奥底で叫ぶ声がする。
 清龍は溜息を吐き、首を振った。
「あれは間違いだったって」
「ほんまか」
「かんなちゃんがそう言ったわけ?」
「いや……」
 かんなはお前の名前を出さへんよ。
「話それだけなら戻っていい? 特待生制度に向けて猛勉強してるってわかるよね」
「せやね。じゃあ一つだけ、ええかな」
 屋上の扉を開けつつ、後ろの清龍を振り返る。
 強い風が吹き、額が見えるほどに髪が舞う。
 その両目はあまりに暗く見える。
「嘘ちゃうな?」
 向きを変えた風が二人を隔てるように吹きすさぶ。
 校庭では小さなつむじ風が巻き起こる。
 蝉の声が不規則に合唱する。
 清龍は真っ直ぐ答えた。
「俺は嘘つかないよ」

 十七時半。
 一日のテストを終えて、疲れた頭を手で擦りながら部室に向かう。
 昨日の練習試合の件で、こばると反省会のため。
 清龍との話に進展がなかったのが頭痛を強める。
 あれ以上聞きようがなかった。
 むわりと汗の臭いが残る中で先に待っていたこばるが、携帯から顔を上げてニッと笑う。
「得点王センパイじゃないすか」
「はよこばるに譲りたいねんけど」
「この九月で引退でしょ」
 冷蔵庫からスポドリのペットボトルを取りだし、ぐひぐびと半分ほど飲んでからベンチに腰かける。
「そう言えば昨日かんなちゃんに採点バイトの話しましたよ。口座も昨日作りに行ったらしいですね」
「助かったわ」
「変な虫つかさないために内職バイト勧めたんでしょ」
「生意気言うな」
 小突かれたこばるがへへっと笑う。
 思い出したようにノートを取りだし、メモがびっしり書かれたページを開く。
「熱心やね」
 昨日の試合の流れと反省点。
 チームメイトの失態、その原因。
 軽く目を走らせるだけでも、その観察眼の高さがうかがえる。
「絶対秋からはスタメン死守なんで」
「後半はボール保持が長かったな」
「反則もチラホラありましたからね」
「相手リーダーがスリーポイントに強かったな」
 先輩後輩モードに切り替えたふたりが、ノートに指を走らせながら会話を続ける。
 時刻は十八時を回りつつあった。
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