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もうLOVEっ!ハニー!
第16章 台風の目の中

 十八時直前まで、ベッドに体育座りをしてユラユラと揺れながら悩んでいました。
 自分の弱みを握る犯罪者の元にノコノコ訪れるのは、誰が見ても馬鹿野郎です。
「行かない……絶対に、行かない……」
 枕をぐにぐにと拳で変形させつつ、時計の針を何度も確認してしまう。
 もしも、告げられたとして。
 どんな未来が待っているでしょう。
 信じずに笑い飛ばしてくれるのか。
 軽蔑されてしまうのか。
 別れてしまうのか。
 やっと掴んだ幸せが壊されてしまうのは想像が着く。
 過ぎた幸せは余りに早く手からこぼれ落ちるのですか。
「行かない……」
 十八時に分針が近づく。
 三階は呪われている。
 つばる、清龍。
 最悪な過去が頭上に暮らしている。
 物理的な距離ができてから、つばるは干渉が極端に減った。
 アリスの事件や、たまにすれ違う時のみ。
 最初から遠い存在が、今頃になって距離を詰めてきたのは何故でしょう。
 卒業まで大人しくしてて欲しかった。
 十八時に合わさった針を見つめて、意識の外で足がベッドから降りる。
 パーカーを羽織って、髪を結んで廊下に出る。
 階段をのぼりながら、引き返せと声がする。
 小学生の私だ。
 やめて、行かないでと。
 フードを被って無視をする。
 二階をすぎる時に確認すると、バスケ部のふたりの部屋は空室のようでした。
 目当ての部屋の前に到着し、心臓がバクバク鳴るのを手で押える。
 自分の足でここまで来てしまった。
 脅しに屈して、選択して来た。
 チャイムを押す指が彫刻のようにぎこちなく軋む。
 すぐに足音がやって来て、扉が開いた。
 白い半袖に紺のジャージ。
 帽子を外した髪は肩で揺れて、疲れた目線が全身に素早く這う。
「入って」
 喉が痛い。
 なにか言おうとしたはずなのに、唇は開かず、足だけは忠実に一歩進み出た。
 パタリと背後で扉が閉まり、腕を伸ばして清龍が鍵を閉める。
 突っ立っている私を横目に、椅子に腰かけた。
 沈黙がジリジリと肌を焼いていく。
「早くこっち来て。写真確認しに来たんだろ」
 なんとか首を動かして、意志を表示する。
「これ以上は入りたくないです……画像を確認させてください」
 蚊の鳴くような声ってこういうのなんでしょう。
 息がほとんど漏れ出ず、上手く話せない。
「わかった」
 清龍は事もなげに携帯を持って近づく。
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