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もうLOVEっ!ハニー!
第17章 深い底まで証を
司が野菜を切り始めたので、元々寝起きの習慣もあって屋上に向かう。
つばるもすぐについてきた。
階段がいつもよりも傾斜がキツく感じる。
寝起きだからか。
眉間を揉みながら、屋上の扉を体で押して開ける。
熱気がぶわりと髪を揺らした。
自分の分に火をつけてから、横に立って催促するつばるに一本差し出した。
「これきりだからな。たかってくるなよ」
「あざす」
ライターもよこせとばかりに手を広げるので、億劫になりつつも手渡す。
嘘ではなかったようで、慣れた手つきで火をつけて煙を吐いた。
スタスタとフェンスに近づき、景色を眺めるようにもたれかかるので、何となく隣に向かう。
「先輩いつから、吸ってんですか」
「入学してから」
「じゃあ、誰かに教わったんですね」
「そいつらはタバコじゃなくて、ラムネを楽しんでたけどな」
隠語に顔をしかめる。
「二年前まで学内で少しだけ出回ってたんだよ。指導教員に誰か密告して噂も消えたけど」
「……華海都寮以外もやべえ奴いるんすね」
自虐なのか。
誰かを責めているのか。
まだ掴めない後輩に頭痛が強まる。
寝すぎたせいもあるだろう。
ギジリ、とフェンスに寄りかかる。
ぴし、と音がした気がした。
ここも古いのだろうか。
「せーりゅー先輩は、なんでかんなに最初に手を出したんすか」
今までの声は猫を被っていたのかと言うほど、殺意を滲ませた声。
つばるはタバコを噛むように咥えて、殴りかかりそうな目で睨みつけてきた。
「あー……かんなに何か聞いたんだ」
望んだ反応じゃないのか、イライラと煙を吐く。
「俺が聞いたのは、姉の彼氏に襲われたことだけですけど。事実ですか」
「そっちか」
「つかバレてますよ。ここんとこ頻繁に部屋に呼んでるでしょ。岳斗先輩と付き合い始めたんですよね、あいつ。何コソコソやってんすか」
ああ、だから距離を詰めてきたわけか。
この話をするために。
しかし頭が痛いな。
「別に強制してるわけじゃない。セフレみたいなもんだよ。昔から」
「あいつが、んな器用なことできるわけねーだろ」
敬語も消え去り、敵意だけ。
「それをどうしてつばるが気にする?」
「邪魔なんだよ」
近づいてくる手のひらを払おうとしたが、視界が二重で上手く当たらなかった。
襟首を掴まれ、フェンスに押し付けられる。