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もうLOVEっ!ハニー!
第3章 追いかけてきた過去
 それでも夕方が近づくと震えが止まらなくなった。
 なんで。
 あの日々は平気だったのに。
 きっと、ここが平和すぎたから。
 私が平和に慣れてしまったから。
 あの恐怖がもう耐えられなくなってしまったんだ。
 今はバカんなと呼ばれただけで泣いてしまうかもしれない。
 環境の変化とは怖い。
 ああ。
 神様。
 隆人の首に掛かっていたロザリオを思い出す。
 今度買いに行こう。
 そして、お守りにしよう。
 どうか、私を守ってください。
 私は、もう誰かに憎まれながら暮らすのは嫌なんです。
 神様。

 夜が来た。
 内線で隆人から会場がこばるの部屋だと告げられる。
 ああ、一週間前とはなんて違う気分でそこに向かうのでしょう。
 美弥に支えられながら二階に上がる。
 もうつばるは昼から寮に着いており、隆人と陸に案内してもらっていたらしい。
 こばるは存在を知らないことになっていたが、そこに参加したという。
 どんな顔して会ったんだろう。
―あいつ、オレがここにいるの知らないんだよ。笑えるけど―
 そうだ。
 家族にすら知られない。
 これが、私のここを選んだ理由。
 皮肉だ。
 兄弟揃ってここに来るなんて。
 早乙女家の悲劇だ。
 そんな風に思っても気は紛らわせられない。
 廊下で躊躇していると、後ろからやってきた奈巳たちに声を掛けられた。
「大丈夫ですよ。かんなちゃんも自分が迎えられた時みたいに相手を歓迎すればすぐに親しくなる」
「松ちゃん可愛いから。すぐに友達になれますよ」
 すぐに。
 それって、いつでしょうか。
 三年間私をクズ扱いしてきたあの人は、どのくらいで私と仲良くなると言うんでしょうか。
 ああ、だめです。
 過去の私が沸々と。
 切ったはずの過去が。
 怒りとともに。
 こんなの私じゃない。
 もっと。
 もっと幸せなはずなんだ。
 今の私は。
 すっと頬に手が添えられる。
 見上げると、奈己が優しい表情で私を見ていた。
「君には味方が何人もいますよ」
 穏やかな声。
 そんな、綺麗な目で見ないでくださいよ。
 涙ぐみそうになりながら頷く。
 礼を言う。
 ああ。
 耐えきりたい。
 せめて、歓迎会だけでも。
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