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もうLOVEっ!ハニー!
第20章 秘密のシャーベット

 撮影ルームは、聞き覚えのあるアップテンポの洋楽が流れていた。
 その音に負けないようにカメラマンが声を上げる。
 照明がモデルを照らし、脇に控えた何人もの人達が服を整えたり、風を送ったり。
 一瞬のシャッターのためにこんなに沢山人が協力してるんだ。
「やばいやばい……ほんまに無理」
 待機場所に足を進めるごとに岳斗が呟く。
 その声は聞いたことないくらい真に迫ってます。
「大丈夫だよー。アンナとルカが次だからよく見といて。ここでは私が世界一美しいって気持ちでいれば、このセットも全部あんたを輝かせる小道具でしかないからさ」
 小脇がポンポンと肩を叩いて、ニッと笑う。
「ハマればたのちいよー?」
「楽しむ……」
「そうそう。錦くんまだ十八でしょ。これから先は無限大じゃん。咎さんに存分にエゴを引き出してもらいな」
 その言葉に岳斗の顔に自信が過ぎる。
「だってキミ、自分の容姿が秀でてるの知ってて生きてるでしょ。そういう奴こそ剥き出しになって楽しんじゃいなよ」
「はは、すげえ。よお見てはりますね」
「ルカがスカウトしてきたんでしょ。スポーツ何やってんの」
「バスケです。引退しましたけど」
「なるほど、モテたわけだ」
「ぼちぼちです」
「素直でよろしい。お、うちのスターの出番だ」
 ルカとアンナが光の元に歩き出す。
 所定位置で二人並ぶと、ルカは腕のアクセを見せるように顎に手をかけ、アンナはその肩に腕をかけた。
 ピタリと止まるとシャッターが鳴る。
「アンナ目線左上に、そうそこがベスト。ルカはその口元最高、指先少し脱力して。素晴らしい! 女神ふたり今日も舞い降りてる!」
 次々にポーズを変える中で、合いの手のように咎が絶賛と指示を繰り返す。
 周りのスタッフも咎の手振りに合わせて正確に動いてるのがよくわかる。
「すごい……」
 これだけのプレッシャーの中で、ルカさんは見たことの無い顔をしてました。
 それはまさしく女神のように美しく、今すぐ跪けと見下す女王様のように迫力がありました。
 いつも学園の中では特殊な余裕があった理由が、目の前に突きつけられる。
 この人は、居場所をこじ開けて作り上げたんだ。
「すごいよね。あの二人が並ぶと数字取れるけど、本当見てて目が幸せになっちゃう」
 長年見てきた小脇が自慢するように呟く。
 何かが心を押し開いていく気がする。
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