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もうLOVEっ!ハニー!
第20章 秘密のシャーベット
出番が終わり、近づいてきた二人は少し息が荒く、互いに何かを話し合っていた。
すぐに小脇が水のペットボトルを差し出す。
「ありがとうございます。今日ちょっと手の扱いがハマらなかったです、すみません」
「反省会が早いよ、ルカちゃん。アンナも、その顔だとダメ出し考えてんでしょ」
「こわきん、あとで話そ」
アイコンタクトで分かり合う三人の絆の深さに、何か込み上げてくる。
ああ、羨望かもです。
同じ道を突き進む仲間。
まだ道すら決まってないから。
アンナが岳斗を見上げて、首を傾げる。
「おやー? さっきまでの素人イケメンさんはどこに行ったのかな。メイクばっちしの新人モデルに入れ替わってるけど」
「先輩モデルはいじわるやな」
からかいと本音の狭間の言葉にむず痒い表情で、岳斗が言い返す。
ルカを見ると、何かを確かめるようにじっと岳斗の全身を凝視していた。
「小脇さん、今日のオーディション何人撮る予定か聞いてもいいですか」
「今日はねー、錦くんが三番目でしょ。あと四人だから七人だね」
確信を得たように頷いてから、一歩近寄る。
「ガク先輩、バスケ準決勝の前半最後のゴールを思い出してください。敵陣エースを抜ききってダンク決めましたよね」
「え、せやね。よお覚えとんな」
「あの瞬間を脳内で再現してくれますか」
小脇もアンナも興味深そうに耳を傾ける。
視線の中心の岳斗は、目を閉じて数回呼吸をしてから、そっと目を開いた。
ざわりと心が騒いだのは私だけじゃないでしょう。
試合中って、こんな眼をしてるんですか。
応援席からは見えなかった距離で。
今すぐそこを退け、という圧が空間を制する。
そこは、俺の、シュート位置だと。
心の底から、この人と対峙する側じゃなくて良かったと思ってしまうほど。
「こりゃ咎さんたまらんね。錦くん、緊張吹っ飛んだでしょ。ルカちゃんナイスアシスト」
「いえいえ、実力発揮不足だけは一番避けたいですから。今の空気、本番中ライトが眩しいなと思ったら、再現してくださいね」
「めっちゃ助かる。試合か……ギャラリーやと思えばいけそう」
無理だと後込んでいた時とは別人。
そうですね、それこそ岳斗さんでしたね。
周りを安心させる空気を持つ人。
本領発揮というわけですね。
「とりあえず七人並んで挨拶するから。咎さんに声かけ行こうか」