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もうLOVEっ!ハニー!
第3章 追いかけてきた過去
「……はい」
低い声で答える。
背中がざわざわした。
記憶と同じ声。
つばるは思案するように宙を見てからスラスラと言った。
「早乙女つばるといいます。さっき兄貴に許可とったからバラしますが、俺はここにいる早乙女こばるの弟です。別に兄貴を追ってきたわけではありません。兄弟揃っておんなじ考えだったってだけです。ここでは兄貴とは思わず、先輩として頼っていきたいと思うんで、セットとして見ないで欲しいです。色々よろしくお願いします」
こばるが目を瞑って頷いた。
どんな思いなんでしょう。
兄でなく、先輩として。
まるで家族の縁はもう完全にないと宣言するように。
「うんうん。今年も個性的なメンバーで歓迎するよ、僕らは。それじゃあ、今夜は無礼講。グラスを持って。なる、乾杯の音頭を頼むよ」
それから、先週と変わらない乾杯をした。
見かけは。
そそくさと美弥たちの元に行く。
まだつばるとは向き合えない。
「こばりん、凄い偶然だね」
同じくつばるの元から逃げてきたこばるが苦そうに笑う。
「本当だよ。運命とか信じてねえぞ、オレ」
「それにしても随分怖い弟じゃん? かんなに手を出したらボクが鉄槌カマしてやるにゃ」
それには私が苦笑した。
ありえない。
いや……
そうじゃない。
違う。
ありえる。
また、あの時のように。
彼は周りを従えて、教師すらも従えて、私を潰しにかかるかも知れない。
彼の一言で周りが動く。
そんな力の持ち主だから。
カタカタと指が震える。
怖い。
そんなの、いや。
「かんな、おいで」
美弥がキッチンに手招いた。
「気分悪かったら早めに部屋に戻ろう。ボクもついてくから」
「ありがとうございます……そうして、いいですか」
私の様子を見て、すぐに美弥は行動した。
隆人に事情を伝えて、すぐに部屋から出る。
あっという間だった。
簡単に、つばるのいる空間から出られた。
拍子抜けするほど。
「あのつばるって奴、ボク苦手。かんなもそうみたいだね」
「はい」
「薫って子も」
「え?」
あの大人しい少女を思い出す。
「あいつ絶対腹黒だよ。あんなおどおどしたフリ見え見えだっての」
それはわからなかった。
美弥の観察眼にただ感心する。