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もうLOVEっ!ハニー!
第5章 悪戯ごっこ
 ポケットから鍵を取り出して鍵穴に差し込む。
 回そうとすると何か抵抗を感じた。
 首を傾げて鍵を抜き、扉に手をかけるとすっと開いた。
 開いてたのか?
 岳斗は眉をしかめて中に入った。
「あっ。ガク先輩、ちーっす」
 金髪が陽光を反射する。
「なんや、こばるか」
「なんやってことないでしょ。オレ今センチメンタルジャーニーなんすよ」
「はあ?」
 こばるが床に胡坐をかいて頭を掻く。
 その傍らにはピアッサーとオキシドール、ガーゼが無造作に置いてある。
「また増やすんか」
 トンと自分の耳を指で叩いて問いかける。
 すでにこばるの両耳には二か所穴が貫通しているのだ。
 こばるは目線を上げて寂しげに笑う。
「オレ、リストカットとか嫌なんすよ」
「俺もやで」
 岳斗は荷物をロッカーに仕舞って隅の冷蔵庫を開ける。
 うわ、なんもな。
 当たり前か……
 春休みの終わりかけやしな。
 バタンと閉めてからこばるの隣に座る。
 片足を立てて手を後ろに突いて。
「耳に針刺すくらいなら自傷ってほどじゃないじゃないですか」
「せやけど、痛いのは」
「変わりませんけど」
 言葉の続きを引き取ったようにこばるが言う。
 岳斗はぐしぐしと長く綺麗な指で彼の頭を撫でた。
 こばるがびくっと反応した。
「なっ、なんすか先輩」
「なんかあったんか」
 低音の声が静かな部室の空気に溶けていく。
 それが気持ちよくて、こばるは少し気が落ち着いた。
「なんていえばいいかわかんないんですけど……先輩って嫌いなヤツいます?」
「隆人だろー、蘭やろ、一人宝塚の美弥やろ……それから」
「いやその」
 余りにスラスラいうのでつられて笑ってしまう。
「ぎょーさんおるで?」
「存在自体苦手なヤツはいますか」
「そこまで他人に執着せえへんし」
 飄々と。
 その淀みのない口調が安心する。
 こばるは手の中でピアッサーを転がす。
「新入生のやんちゃバカと早速喧嘩でもしたんか」
「えっ。先輩つばるに会ったんすか!?」
「誰やねん、ソレ」
「だからその……え? やんちゃバカ?」
「ああ。それは蘭がそう云うてただけ。まだ会うてへんよ」
「そうすか……」
 こばるの目線が空中に漂う。
 岳斗はじーっと後輩を見つめた。
「早乙女こばるくん」
「へ?」
 がっと首を腕で締める。
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