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もうLOVEっ!ハニー!
第5章 悪戯ごっこ
「それは思っていない。特に君に関しては一生謝っても済む問題じゃない」
「なんでこの寮にいるんですか……信じられない」
「あの頃の俺はおかしかった。君に話すことじゃないけど、中性的な顔だろ? だから近所の高校生に暴力を受けていたんだ。性的な。それで……いや、やめよう。言い訳でしかない。現にさっきすれ違った時に顔を隠した卑怯者だ、俺は」
カチカチ。
秒針が鳴る。
この一週間、私はいつも自分がなにしているんだろうと思ってしまいます。
今度は心底憎んでいた人の部屋でその人と二人きりなんて。
「もう……いいです。私、帰りますからどいてください」
扉に近づくが清龍は動かない。
彼は帽子を取って傍らに置いた。
見上げると、癖のついた髪の下にあの時見た顔がある。
「かんな」
「呼ばないでください」
あの夜何回も呼ばれた。
耳にこびりついて離れない声。
「姉さんよりずっと綺麗になったな」
言い返そうとした口が開かなかった。
というより、塞がれてしまった。
優しく頬に添えられた骨ばった手。
上を向かされた顔の目の前に清龍の顔がある。
ぎゅっと目を閉じて唇も強く閉じる。
つばるのときのように無理やりこじあけてはこなかった。
ただ唇が触れ合っただけ。
ほんの数秒。
離れた瞬間息を吸う。
自分でも意識しないうちに止めていたみたいです。
ぽんと両肩に手が乗せられる。
清龍が頭を下げていた。
「悪い……」
「そうやって謝ってまた傷つけるんですか」
私は彼を押しのけて扉から部屋を出た。
部屋に戻って洗面所に走り口をゆすぐ。
何度も、何度も水を口にぶちまけるようにして。
うがいも念入りにやる。
少し気が済んだ時には息が切れて洗面台にもたれかかるようにして立っていた。
タオルでごしごしと顔全体を拭う。
痛いけど気にしない。
ベッドに倒れてやっと安息を得た気分になった。
けれど最悪からは抜け出していない。
「なんでですか……」
神様ってこれも全部見ている上でやっているんでしょうか。
なんて気まぐれで残酷なんでしょう。
携帯を手に取り姉の連絡先を見つめる。
発信ボタンの上で指が固まる。
ふっと苦笑いして電源を切った。
「なんでこの寮にいるんですか……信じられない」
「あの頃の俺はおかしかった。君に話すことじゃないけど、中性的な顔だろ? だから近所の高校生に暴力を受けていたんだ。性的な。それで……いや、やめよう。言い訳でしかない。現にさっきすれ違った時に顔を隠した卑怯者だ、俺は」
カチカチ。
秒針が鳴る。
この一週間、私はいつも自分がなにしているんだろうと思ってしまいます。
今度は心底憎んでいた人の部屋でその人と二人きりなんて。
「もう……いいです。私、帰りますからどいてください」
扉に近づくが清龍は動かない。
彼は帽子を取って傍らに置いた。
見上げると、癖のついた髪の下にあの時見た顔がある。
「かんな」
「呼ばないでください」
あの夜何回も呼ばれた。
耳にこびりついて離れない声。
「姉さんよりずっと綺麗になったな」
言い返そうとした口が開かなかった。
というより、塞がれてしまった。
優しく頬に添えられた骨ばった手。
上を向かされた顔の目の前に清龍の顔がある。
ぎゅっと目を閉じて唇も強く閉じる。
つばるのときのように無理やりこじあけてはこなかった。
ただ唇が触れ合っただけ。
ほんの数秒。
離れた瞬間息を吸う。
自分でも意識しないうちに止めていたみたいです。
ぽんと両肩に手が乗せられる。
清龍が頭を下げていた。
「悪い……」
「そうやって謝ってまた傷つけるんですか」
私は彼を押しのけて扉から部屋を出た。
部屋に戻って洗面所に走り口をゆすぐ。
何度も、何度も水を口にぶちまけるようにして。
うがいも念入りにやる。
少し気が済んだ時には息が切れて洗面台にもたれかかるようにして立っていた。
タオルでごしごしと顔全体を拭う。
痛いけど気にしない。
ベッドに倒れてやっと安息を得た気分になった。
けれど最悪からは抜け出していない。
「なんでですか……」
神様ってこれも全部見ている上でやっているんでしょうか。
なんて気まぐれで残酷なんでしょう。
携帯を手に取り姉の連絡先を見つめる。
発信ボタンの上で指が固まる。
ふっと苦笑いして電源を切った。