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もうLOVEっ!ハニー!
第5章 悪戯ごっこ
 岳斗はからからと笑った。
「んな驚くん? 俺はただつばるに対して下したい命令があるんちゃうかってね」
「え」
 持とうとした手からカップが落ちる。
 カタンとティー皿に音を立てて戻る。
 岳斗がさっきとは違う光を湛えた目でこちらを見ていた。
「図星?」
「なんでガク先輩が……それ」
「中学の話はこばるから聞いたで。まあ、かんなちゃんに会う前にってのは不躾な話やけどね。心配しとるんよ。寮ってのは限られた空間やからね。隣人と問題が起こると三年ずっと苦しむことになる」
 まるで経験したかのような口調ですね。
 敢えて口には出さずに心で呟く。
「まあ、先輩とな。俺は」
 聞こえたんでしょうか。
 岳斗は真剣な顔になって続けた。
「俺こんな見かけやから今まで色々やんちゃしてきたんよ。で、大体人見ればどの程度のワルか判断できるようになってな。話はわかっとる思うけど、つばるは相当やんなあって。かんなちゃんが避けとるから何かあったんは想像できる」
「何があったと思いますか?」
 声が震えた。
 この部屋で起きたことを思い出して。
 机に置いた手が小刻みに揺れる。
 ねえ、岳斗先輩。
 何があったかわかりますか。
 貴方の経験から。
「……俺の口から言うて欲しい?」
 卑怯な答えですね。
 でもその眼は私の心を見透かしているようで。
「ふっ……初めて今日お会いしたとは思えないですね。何者ですか、ガク先輩」
「関西人」
「あはははっ。それは口調でわかりますよ」
「おー。やっとわろたな」
「あっ……」
 手に口を当てる。
「とりあえずバスケ試合を楽しみにしてえや。お邪魔さん」
 そういって立ち上がった先輩を引き留める。
「ん?」
「なんで私に譲ってくれるんですか!?」
 玄関の扉に手をかけながら岳斗が振り向いて言った。

「そんなんかんなちゃんに一目惚れしたからやで。他の男に手出されるん嫌でな」

 扉が閉まる。
 口を開けたままの私を残して。
「な……」
 なんですかそれ。
 遅れて心臓が早鐘を打ち始める。
 テーブルを見ると二つのカップが向かい合っている。
 ああもう。
 今日はなんて色んなことがあるんでしょう。
 蘭先輩といい岳斗先輩といい三年方は本当に個性的すぎます。
 ベッドに身体を投げ出して、電気も消さずに私は目を瞑った。
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