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もうLOVEっ!ハニー!
第6章 思惑先回り

 試合終了の笛が鳴るまで、体育館を出ていく者はいなかった。
 トイレにすら誰も行かなかった。
 誰もが瞬きすらもったいないほどに惹きつけられていた試合が終わる。
「三十対三十……結果はフリースローで決めます」
 審判の指示に全員が雄たけびを上げる。
 これが見たかったんだとばかりに。
 美弥さんによると互いのチームから代表を一人選出して、フリースローをどちらかが外すまで続けるのだそうです。
 新入生からは当然ながらつばるが出てきた。
 まるでアイドルの登場のように女子が声援を送る。
 そして在校生チーム。
 出てきたのは岳斗ではなくこばるだった。
 送り出した本人はにやにや笑いながら腰を下ろした。
 どうして……
 つい湧いてしまった疑念。
 けれどすぐにわかった。
 事情を知っているんだ。
 岳斗先輩は。
 彼らが兄弟であることも、その縁が切れそうなことも。
 敢えて二人に競わせて。
 けれど、それで一体何を見たいんでしょう。
 それは私にもわからない。
「手抜いたらコロス」
「兄貴こそ」
 こばるがはっとする。
 先輩じゃない。
 兄に勝負を挑んだのだ。
 なにかむず痒い。
 こばるは緩む顔を引き締めて自分のゴールを見上げた。
 互いがボールを持ち構える。
 笛の音が鳴ったら同時に放つ。
「……楽しませえよ」
 岳斗は二人を見比べて笑った。
 そっくりのお前らはどうなるんや。
 そう投げかけるように。

 ピー……

 笛が鳴る。
 二つの球が正反対に飛ぶ。
 けれどその軌跡はシンメトリーで、余りに綺麗だった。
「鳥肌……やっば」
 美弥が腕をさする。
 息を飲む音がする。
 
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