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もうLOVEっ!ハニー!
第6章 思惑先回り
 閉会式が終わり寮生が裏庭を通って華海都寮に帰る。
 その道中でこばるがつばるを呼びつけた。
 茂みの中で、人目を憚りながら二人は向かい合う。
「決まった?」
「ああ」
「どうせかんなのことなんだろうけど」
「つばる」
「なに?」
 こばるは落ち着いた眼で弟を見つめた。
 風が二人の間を揺らめいて過ぎる。
「さっきバスケしていて思ったんだけどな。オレ本当に家族見捨ててお前に迷惑かけただろ。この一年」
「今更」
 笑い飛ばすようにつばるは一蹴する。
「けど、お前はこの寮に来た。オレと同じ寮に。嫌でも二年間は一緒に過ごすんだ」
「先輩の階には行かねーですけどね」
「兄貴にさせてくんねーか?」
 つばるが固まる。
 笑っていた口が強張る。
「……今、なんて」
「お前の兄貴に、またなっていいか」
「は? 何言ってんの」
 まるで予想外の命令に困惑を隠せない。
 この寮に来て初めて見せる動揺だった。
「お前歓迎会で言ったじゃん。セットとして見るなって。兄弟じゃないって。正しいとは思ったよ。オレはもう兄失格だし」
「そうだよ」
「でもやっぱ、さっきバスケやってて、お前オレに似てるじゃん? 性格といいやり方といい……やっぱさ、オレお前の兄なんだよね。言葉変だけど、兄にさせてくれねー?」
 数秒の間。
 つばるは体育館の熱気を思い出していた。
 背中合わせで互いにフリースローを続けた時間を。
 飛ぶタイミングも、着地も同じ。
 同じ呼吸。
 確かにつばる自身も感じていた。
 やっぱ兄弟だって。
「……勝手すぎ」
「中学みたいに兄ちゃんて呼んでくんねーかな」
「ぜってーやだ」
 きっぱり断った弟に少し落胆するこばる。
「まあいいや。そういうわけでオレの命令は以上な。じゃあ」
「待てよ、兄貴」
 寮の方向に歩き出したこばるを呼び止める。
「……マジでそれでいいわけ? 命令」
 こばるは振り返らなかった。
「ああ。オレはな」
 ばつが悪そうにつばるが目線を落とす。
「しかーし」
 それから突然声色が変わった兄を見上げる。
 こばるはにいっと笑ってつばるの後ろを指差した。
「オレはよくても、よくない先輩がいるっつーこと忘れんなよ」
 ガサガサ。
 茂みから現れた長身。
「そういうわけやんな」
「錦先輩……? なんで」
 かんなとのやりとりを知らないつばるはまたも戸惑う。
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