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わたしの心が消えるとき
第3章 走る少女
少女の家は貧しい。

父親の経営する小さな工場は経営難で、従業員の給料を払うのにも苦労していた。
借金を重ねて、ようやく操業しているのだった。

少女が9歳の時、母親が生活苦と心労で倒れ、亡くなった。

卒業を間近に控えた、小学六年生のある日…

「ただいまあ!」
少女は元気よく、玄関の扉を開けた。
彼女は上機嫌だった。
学校のクラブ活動で、短距離走の自己ベストを更新したのだ。
すでに校内で彼女に敵う者はない。男子にも負けない程だった。

家は静かだった。
父親は、きっと金策に走り回っているのだろう。

自分の部屋に入ろうとした時、隣の部屋から音が聞こえた。
双子の弟、貴志の部屋だ。

これ…泣き声?
貴志が泣いてる?

少女は、ドアをノックした。
「貴志?どうしたの?」
部屋に入ると、弟がベッドの上で、うずくまっていた。
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