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わたしの心が消えるとき
第3章 走る少女
「貴志…?」
「姉ちゃん…」
「何かあったの?」
「あいつらが…」
「あいつら?」
「クラスの奴らが…お前の親父、ヤクザから金借りてるんだろうって…お前ん家の工場、もうすぐ潰れるって…」

昨日、恐そうな男達が、借金の取り立てに来ていた。
父親は、土下座して謝っていた…

「大丈夫だよ!お父さん、頑張ってるから。きっと工場も立ち直るよ」
弟はまだ泣いている。

双子といっても、二卵性双生児だ。姉弟はあまり似ていない。
容姿だけではない。明るく活発な姉に比べて、弟は内気で無口だ。体も小さい。
そんな貴志は、いつも歳の離れた弟のように姉に甘えてきて…
少女も弟を可愛がっていた。

姉は励ますように
「それにね、ボク今度、清華女学院に入るんだよ。あの清華だよ!誰より足が早いから、特別に入れるんだ!そこでもっと頑張って、オリンピックに出るような、すごい選手になって、お金いっぱい儲けて、そんな奴ら、見返してやるんだ!」
「姉ちゃん…」
「ね、少し寝ようか。お姉ちゃん、そばにいてあげるから…」

少女は弟を抱きしめて、そのまま横になった。

ゆるやかな時間が流れ…
いつしか姉も眠り込んでしまった。
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