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わたしの心が消えるとき
第7章 迷いの海、夏休みの終わり
その夜。
深夜の街をひとりの老人が歩いていた。

猿のようなシワだらけの顔。白い髭。
かなりの高齢だが、しっかりした足取りで腰も曲がっていない。
体力も精力も若い者に負けない。それが彼の自慢だった。

今日は月に一度、愛しい娘に逢える日だ。

いつも通りの時間に玄関前に立つと、呼び鈴を押す前にドアが開いた。
「お待ちしてました。先生」
女性が彼を招き入れる。
「お茶、お入れしましょうか」
「いや結構。すぐ娘に会いたい」
「よく眠っています」
「薬の量は充分かね?」
「はい、大丈夫です」

老人は階段を上がって娘の部屋に入った。
ベッドに近寄る。

眠っている少女の顔は、実際よりさらに幼く見える。
色白で端正な顔立ち。
長い睫毛。
わずかに開いた唇が艶めかしく見えた。

ああ…
なんという美しさ…
真に美少女という言葉がふさわしいのは、この子をおいて他にあるまい…
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