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富美
第9章 秋の逢瀬
しかし、9月、夏休みが終わると、秀夫は高校に通わねばならない。

「もうここに来たらあかんよ」

アルバイトの最終日、秀夫は富美に言われた。

「学校の帰りに寄れるよ」
「前にも言うたけど、人からおかしいと思われたら、もう会えんことになる」
「ほな、どないすればええ?」

少し不貞腐れた秀夫の頬にチュッと唇とつけると、「火曜日がお休みや」と言った。

「火曜日?」
「家で待っとる。お風呂沸かして待っとるから」

そう言って、富美は秀夫の手をぎゅっと握った。

そして、待ちに待った火曜日。秀夫は授業が終わると、富美の家に急いだ。

「富美さん!」
「待っとったよ」

玄関を開けると、エプロンを外しながら富美が台所から飛び出してきた。

「髪、切らんと。長いよ」
「そうかな・・」
「一度坊主にしたらどうや?」
「えっ坊主?」
「うちはさっぱりした方が好きや」
「分ったよ。日曜日に床屋に行くから」

秀夫は富美の好みに変えられていくが、富美が気に入ってくれるなら、それでいいと思っていた。

「お風呂に入って、さっぱりしようか」
「うん」

富美に手を引かれ浴室に入ったが、そこは家庭の風呂だから広くない。一人が洗い場、一人が湯船、それが普通だが、秀夫が湯船に入ると、富美が体を滑り込ませて入ってきた。
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