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富美
第11章 最高の女
翌日、妙子が学校の前で待っていた。
「彼女はおらんよ」
「えっ・・」
「さっき引っ越していった」
「う、うそだ・・」
予想はしていたが、別れの挨拶もしていない。秀夫は動揺していた。
「ええか、秀夫ちゃん。あん女は秀夫ちゃんが付き合う女じゃないんよ」
「あん女ってなんだよ。富美さんは変な女じゃないよ・・」
その瞬間、バチンと妙子の右手が秀夫の頬を叩いていた。
「秀夫ちゃん、20歳も違う女と付き合うてなんになるん?」
「・・・」
「目を覚ましなはれ。あんたは高校生よ」
再びバチン、バチン・・と妙子に頬を叩かれ、何とか正気の戻った秀夫はその場にへたり込んでしまった。
それ以来、富美とは会っていない。
「北海道に行った」、「九州に行った」など、いろいろな噂を聞いたが、詳しいことは誰も教えてくれなかった。今ならスマホも携帯もあるから、いつでも連絡が取れるが、この時はそんなものはなかった。
あれから25年、秀夫は当時の富美よりも年を取ってしまったが、今でも秀夫にとって富美は最高の女だ。
「秀夫ちゃん、抱いて・・」
ああ、もう一度会ってみたい・・
(了)