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富美
第10章 露見
だが、狭い町だ。二人の仲が他人に知られるのは時間の問題だった。

寒くなり始めた11月中旬、富美の家に行くと、自宅の隣のおばさん、吉井妙子が立っていた。

「ええ男を見つけようとしとるんとちゃうか?秀夫ちゃんも気いつけんとあかんよ」

母親にそう言っていたおばさんだ。

「どこに行くんか?」
「あ、いや、どこにも・・」
「こっちに友達でもおるんか?」
「あ、いや、お、おばさん、あの、その・・」

妙子に睨まれ、しどろもどろになった秀夫は慌てて駆け出そうととしたが、腕を掴まれていた。

「色々言われとるで」

気が動転した秀夫は妙子の手を振りほどいて逃げ出した。振り返ると、彼女が目で追っていた。そして、角を曲ると、そこに座り込んでしまった。心臓はドキドキ、汗が噴き出していた。

まだ見ているかな?とこっそり逃げてきた方を窺うと、妙子が富美の家に入って行くのが見えた。じりじりして待つこと10分、妙子が帰って行った。

「ふ、富美さん・・はあ、はあ・・」

秀夫が息を切らせて玄関に飛び込むと、富美は座敷に座っていた。

「秀夫ちゃん・・」
「吉井さんが・・」
「何でもあらへん・・」

青ざめた顔の富美は秀夫の首に手を絡めて唇を合わせてきた。
彼女も何か言われたことは確かだった。

二人は気が急いていた。全てを忘れたく、シャワーで体を流しただけで、布団に倒れ込むと、前戯もそこそこに交わった。
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