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私、普通の恋愛は無理なんです
第2章 カフェ
「えっと……」
 セミロングの髪を束ねてポニーテールにして気合いを入れてから、残ったアイスコーヒーを飲み干す。化粧ポーチの中の薄いステンレス製名刺入れを爪で小さく開いた。小さなナイロンの小袋が数枚顔を覗けた。コンドームだ。身体の奥が熱い。
「……よし」
 暗かった画面が明るくなった。
「は……?」
 香織のサムネイルがフワリと浮かび上がった。顔いっぱいの笑顔で映った丸顔のサムネがヤケに嬉しそうに見えた。「なんでアンタなの」とつぶやいて、スマホの画面を指で弾いた。
 
 ――今から里井部長と飲みに行ってきまーす。
 
 かわいい猫がビールでカンパイ、というスタンプと共に……。
「あっそう」とスマホに突っ込む。でも、私も香織みたいに素直だったら。
 香織のメッセージに返信はしなかった。
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