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メンタリズムな恋…
第9章 先生、逸れないでね
ペントハウスの入り口には相変わらず、誰の為なのかわからない警護が居る。
その警護の人は私を見て目を丸くする。
「先生は?」
胸を張って尋ねる。
「中に…。」
そう言って私の為に扉を開けてくれる。
「仕事に戻ります。」
警護の人に笑顔でそう伝えれば警護の人が
「ご苦労様です。」
と私に敬礼する。
すぐに行方不明になる先生…。
それを見張る為の警護…。
だとすれば警察は先生がまだ石井と共犯の可能性を疑ってると考える。
河合教授は先生が正義感の強い人だと私に言う。
先生が危険な人物だとメンタリストである教授が何かを感じてたなら私に先生の助手というバイトなんかさせるはずがない。
河合教授が信じるように私も先生を信じたい。
玄関を抜けてリビングに入れば巨大なソファーに黒いボロ雑巾が横たわってるのが目に入る。
「先生…。」
軽く声をかければゆっくりとボロ雑巾は頭を起こし黒縁眼鏡を掛け直して私を確認する。
「ただいま…。」
刺激しないように笑顔を作る。
ここでボロ雑巾に不機嫌になられたら私の知りたい事を聞く前に、いつものくだらない言い争いだけで終わってしまう。
私が先生をちゃんと信頼してる事を伝えたい。
先生はゆらりと立ち上がり幽霊のようにふらふらと私の前まで歩いて来る。
先生の手がそっと私の首筋に触れると私の身体を引き寄せて抱き締める。
「おかえり…。」
耳元でそう呟く声がする。
今日1日、先生も不安だったのだと感じる。
私もメンタリストだ。
私の心を先生が見抜くように私も先生の心の動きを緩やかに探る。