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メンタリズムな恋…
第9章 先生、逸れないでね
私の気持ちを先生に返そうとした…。
先生の背中に手を回す。
ちゃんと帰って来たよ。
そう伝えたつもりなのに…。
「焼肉の臭いがする…。」
と、やっぱり不機嫌になるボロ雑巾が私の髪をクンクンと匂う。
そこっ!?
今は感動の再会という場面じゃないのか!?
「焼肉は河合教授に奢って貰ったの。因みに先生の分もお土産にあるよ。」
河合教授は偏食する先生の為に焼肉弁当をお持ち帰りで買ってくれた。
その紙袋を先生に見えるように軽く持ち上げる。
「……。」
ボロ雑巾の無言攻撃…。
ああ、面倒臭い!
「食べないなら私が夜食に食べちゃいますよ。高級お肉の焼肉弁当だから残したら勿体ないし…。」
軽く脅せば
「食べる…。」
と拗ねた答えが返って来る。
なんとなく…。
その拗ね方が可愛くて愛おしいと思う。
本物の大和 幸之助はこういう人なんだ。
流し目の貴公子と呼ばれ凛々しく仕事をこなし、誰もが憧れてうっとりとする先生は作り物の姿…。
本物はボロ雑巾のような姿で我儘な上につまらない事で拗ねては私の手を煩わせる。
それを知るのは世界中で私だけという自己満足。
「なら、準備するから食べて下さい。」
先生から離れようとすれば先生が私の身体を抱えたまま離そうとしない。
「もう、ちゃんと先生と居ますよ?私はまだ先生の助手というバイト中だし…。」
「そんで仕事をサボって片桐と焼肉?」
「だ・か・らっ!河合教授と会ってたんです。片桐さんは来てません。このお弁当は間違いなく教授の奢りだってば…。」
そこまで言った私の口を先生の唇が塞いで来る。
「むぐっ…。」
そういう不意打ちは狡いよ。
私が本当に逃げるつもりがないのか先生が確認してるとしか思えない。