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メンタリズムな恋…
第1章 怪しいバイトの始まり



しかし、このまま名無しのままでは会話がやりにくいなとか考える。


「先生…。」


うむ…。

私は助手だ。

ならば先生と呼ぶのが相応しい。

たった一週間だけなのだし…。

彼が本物の大和さんなら学ぶ事も多かろう。


「ねえ、先生…。」


グッタリとしてソファーの背もたれに顔を伏せたボロ雑巾男に声を掛ける。


「腹…、減ったんだ…。」


小さく、そんな呻き声が聞こえて来る。


「はっ!?」

「腹…、減った。」


スクッとボロ雑巾が立ち上がり幽霊のようにフラフラと歩き出す。


「ちょっと!?先生!?」


これが噂にあった行方不明の始まりかもしれないと思うとゾッとする。

彼はテーブルの上にあった鍵の束だけを握り私の存在など見ずに玄関へと向かって行く。


「だから!?先生!?待ってってば。」


私は同じようにテーブルの上に置いてあった携帯を握り先生の後を追って玄関に向かう。


「どちらまで?」


玄関を出れば警備の人が聞いて来る。


「……。」


先生は無言のまま…。

いや…、警備の人の存在を無視してエレベーターに向かって一目散に歩いて行く。


「お腹が空いたらしいです。食事して来ます。」


私が助手なのだから私が先生の代わりに答える。


「いってらっしゃい。」


警備の人が明らかに同情する顔を私に向けていた。


一体、あの人はなんなんだ?


その事を警備の人に聞きたいとか思うけど先生は私の存在も無視してエレベーターに乗り込もうとしてるのが目に入る。


本当にあのボロ雑巾男はなんなんだ!?


そう叫びたい自分を堪えて閉まりかけたエレベーターの扉をダッシュで手で押さえてエレベーターの中に一気に滑り込む。

これが私のバイトの始まり…。

それは悪夢の様なバイトだと私が悟るのはまだまだ先の事だった。


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