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メンタリズムな恋…
第11章 先生、助けて…
少しばかしタクシーで移動した。
街全体と港が見える丘…。
海の向こうに大きな船が見える。
「凄い船…。」
山育ちの私は船なんか見る事があまりない。
「横浜までワンナイトクルーズする豪華客船…。」
先生は懐かしげに目を細めてそれを見る。
「乗った事が?」
「……。」
答えない。
その代わりに黙ったまま私の手を引いて歩き出す。
行き先は墓地…。
外人墓地…。
埋葬者の身内以外は立ち入り禁止なのに先生は当たり前のように、そこへ向かう。
余計なお喋りは出来そうにない雰囲気…。
ある墓石の前で先生は立ち止まる。
墓石に刻まれた十字架…。
そしてYAMATOの文字…。
「先生の?」
「母…、その隣りは母の祖父母…。最初に埋葬されたのが母だった。」
口数の少ない先生の言葉から様々な情報を得る。
先生の家族はクリスチャン…。
だからお母さんの単独妊娠は認められない。
お母さんは先生を産む為に中国へと逃げる。
その暮らしで疲れたお母さんが倒れる。
やむを得ず日本の神戸に居た祖父母を頼る。
お母さんの亡き後、先生は祖父母と暮らす事になる。
肉まんはお母さんが好きだった味…。
ゴマ団子を墓石に添える先生が
「悪い。肉まんは食っちまった。」
と話し掛ける。
「先生は本当にキリストの生まれ変わりかも…。」
墓地を出て聞いてみる。
「メンタリストは神でも万能でもない。」
先生はそう力強く言う。
キリストは自分を神だと過信した。
先生はその失敗を責めるように空を見る。
そんな先生のシャツを握る。
だって先生が消えそうに感じる。