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メンタリズムな恋…
第11章 先生、助けて…
「名前は?」
「亜子…、三好 亜子だよ。」
「亜子か。もう一度ジャンケンする?」
「するっ!」
ジャンケンをしてれば悪魔を忘れて怖くない。
次はまた私が負ける。
「何歳?」
「3歳…。」
そうやって少しづつ少年と馴染んでく。
好きな食べ物は?
好きなテレビは?
ジャンケンはずっと私の負け…。
「こーのすけ…、ズルしてる。」
「してないよ。」
「だって亜子、勝てないよ。」
「うん、だって亜子が何を出すかわかるから…。」
「こーのすけ…、わかるの?」
「わかるよ。亜子がここから出たい事や、お父さんやお母さんが居るお家に帰りたいって事もね。」
幸之助の言葉に身体が強張った。
私はお父さんに振られた。
私はお母さんに捨てられた。
悪魔はここを出れば私を殺すと言う。
「いや…、亜子は行かない…。何処にも行かない。」
呪文のように口吟む。
「亜子…、大丈夫…。」
「いやぁ…。」
「大丈夫だよ。亜子…、シーッ…、ゆっくりと息をして…、大丈夫…、俺が居る。俺が居る限り亜子に怖い事は起きないから…。」
幸之助が私に近付いて来る。
身体が動かないから私は首だけを横に振る。
「い…や…。」
「大丈夫…、ほら吸って…、そう次は吐いて…。」
幸之助は私を抱き上げると背中を撫でて私に呼吸を促す。
詰襟の学生服の上着を脱ぎ私をその服で包み込む。
ふかふかの毛布のようにその服に残る幸之助の体温が暖かくて気持ちがいい。
車にもたれるようにして床に座り私を膝に抱っこする幸之助が私の背中をゆっくりと柔らかく叩く。
疲れてた。
まだ3歳だった私は眠くて目を擦る。
眠っちゃいけない…。
眠ると悪魔に殺される。
その思いだけで必死に幸之助にしがみつき、心の何処で助けて欲しいと願ってた。