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メンタリズムな恋…
第12章 先生、話が聞きたい



更に石井には躁鬱の病があると診断書を提出し、私の事は迷子になってた子供を可哀想だから保護したのだと主張する。

息子には犯罪に対する責任能力はなく、迷子の子供を犯罪の意識を持たずに自宅に連れて帰ってしまったというストーリーが父親の作り出す物語だった。

私を警察に託す前に勝手に別荘に入り込んだ見知らぬ中学生が更に連れ去ったのだとまで父親は言う。

その上で石井を病院に入院させる予定まで父親は供述する。

私に事件の記憶はない。

私が石井から受けた恐怖の事実は石井の父親の手で闇へと葬られる事になる。


「そんな…。」


驚愕する私を先生が切ない目で見る。


「最低な父親だろ?そんな奴が俺の父親だ。」


泣きたいのは先生のはずなのに…。

先生は寂しい笑顔を私に向ける。


「しかも、石井を病院に入れた後から父親として俺に会いたいと言って来た。」

「だって、先生は自分の子じゃないって警察で供述をしたのでしょ!?」

「そう、検察官の立場である人間が自分の息子の為に偽証したって事だ。」


検察官を辞任した父親の偽証を今更、責めても仕方がないと先生が呟く。


「そんな人…、先生のお父さんじゃないよ。」


膨れっ面になる私を先生が笑う。


「両親も亜子と同じ事を言った。あの親父は俺に会いに来たくせに息子としての話は石井の話しかしなかったからな…。」

「石井の?」

「そう、もう自分の手には負えないとか、自分に万が一の時は俺が弟として何とかしてくれとかな。」


呆れるしかなかった。

でも呆れる前に先生の辛そうな顔を見るのが苦しいと思う。

笑いながら話す先生…。

今にも泣きそうなのに…。

私が先生にしてあげられる事が見つからない。

私がしてあげられるのは先生の手を握り傍に居てあげる事しかなかった。


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