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メンタリズムな恋…
第14章 先生、気障過ぎる
この道…。
見覚えがある。
雑木林が続く山道…。
あの日、悪魔から逃げる為に先生の自転車で駆け下りた山道を先生の車で今は登る。
「見えて来た…。」
レンガが積まれた壁が見える。
あの日、先生と乗り越えた壁…。
所々が崩れてて雑草が生え、随分と古びた雰囲気を醸し出してる。
「石井家は手放したのよね?」
「ああ、新しい買い手はこの辺りの開発予定を考えてる不動産屋だが、この裏山を買わないと開発が出来ずに放置されたままになってる。」
「裏山の持ち主は?」
「石井だよ。」
なるほど…。
別荘という一部だけを売っただけで石井家はまだこの辺りを持つ地主のままなんだ。
別荘の門の前で先生と片桐さんの車が停まる。
まるで廃墟だと思う。
好き放題に伸びた蔦が錆びた鉄の門に絡み付く。
「本当に…、ここに…?」
夏だというのに寒気がする。
山から吹き降ろす風が冷たく、伸び放題の草や蔦が幽霊のようにユラユラと揺れる。
「間違いなく、誰か居ますね。」
片桐さんが足元を見て先生に伝える。
「俺を待ってやがる。」
先生の顔が苦痛に歪む。
その痛みを感じるから私の心も痛くなる。
馬鹿だった…。
先生の恋人なんだと浮かれてた自分が情けない。
石井という存在を打ち消さない限り、私と先生との未来は暗黒にしかなり得ない。
集中しなければ…。
私だってメンタリストだ。
この戦いに負ける訳にはいかない。
片桐さんが門を開ける。
ギィギィと錆びた嫌な音が耳に響く。
「ついて来て下さい。」
ここは主導権を片桐さんが握る。
先生は冷静な表情のままお好きにどうぞと片桐さんを見てる。