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メンタリズムな恋…
第14章 先生、気障過ぎる
門から十数mも歩けば母屋がある。
「立派な別荘だったんだね。」
大きなテラス付きの洋館…。
出窓のガラスが割れてる。
こちらも雑草や蔦が伸び放題でお化け屋敷のように様変わりしてると思う。
あの日、この別荘を私は見てない。
ただ先生が懐かしげに別荘を見上げる。
あの日、先生はずっとこの別荘を見てた。
父親が出て来ないかとチャンスを待ち、何時間もこの別荘を眺めた先生を想像する。
まだ中学生だった。
先生が求めた父親はもう居ない。
先生の中に残る後悔を感じる。
何かを振り切るように先生の表情が変わる。
「こっちだ。」
母屋の建物の右手へと先生が慎重に移動する。
庭木も荒れ果てて裏山の雑木林のように生い茂る中を数mも進めば、それが姿を現す。
あの日、私が居た小屋…。
石のレンガ造りで出来た倉庫…。
正面には車2台分を入れる為の大きなシャッターが2枚付いており、その1枚が上がってる。
「僕が先に…。」
私の後ろに居た片桐さんが前へ出る。
私はシャッターの影に隠れ片桐さんがシャッターの中へと1歩を踏み出す。
先生は小屋の前で堂々と仁王立ちをし、目を細めて中を見る。
「誰か居ますか?」
片桐さんの声がする。
先生の目が見開かれる。
「動くなっ!」
片桐さんの叫び声がする。
中の様子を見ようと私もシャッターから半分だけ身を乗り出す。
中はかなり埃っぽい。
コンクリートが剥き出しになる床…。
その真ん中にはかなり古臭い白いセダンの車がある。
あの車…。
私を拐った車…。
身体がビクリと痙攣する。
手が震え出す。
その車のボンネットにもたれる男が居る。