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メンタリズムな恋…
第16章 先生、もう探せない
沙莉奈はじっと私の顔を見る。
「わざわざクリスマスイブに行く必要がある場所って亜子にはそんなに大切な場所なの?」
ずっと沙莉奈の質問に答えて来なかった私だから沙莉奈が慎重に聞いて来る。
「うん…、凄く大切な場所…。」
「行けば亜子の為になるの?」
「為になるかはわからない。ただ自分に踏ん切りを付ける場所だと思う。」
「踏ん切り?」
「そこで気持ちの整理が付けば私に何があったかを沙莉奈に全部話すよ。片桐さんの事とかちゃんと考えなきゃいけないと思うし…。」
片桐さんの事を蔑ろにするつもりは無い。
嘘がなく誠実でとても私を大切にしてくれてる。
大切だからこそ、私と付き合いたいと片桐さんからは言わない。
私が片桐さんを選ぶまで片桐さんは待ってる。
未だに、片桐さんの気持ちだけが私に伝わる一方通行の関係が続いてるのはその為だ。
そろそろ私も選ぶ必要がある。
誰も私の心を理解が出来ずに、耐え難い孤独を感じる事になったとしても、この先の私は私の道から逃げる事は出来ない。
「いいよ。」
私の決意に納得した沙莉奈が了承する。
「ありがとう、クリスマスイブなのにごめんね。」
「大丈夫…、今年は就職するんだからパパの会社のパーティーに出なさいって言われてたけど、あんまり行きたくなかったんだ。」
「そうなの?」
「あわよくばお見合いさせたいって魂胆がパパは見え見えなのよ。」
まるでメンタリストのような事を沙莉奈が言う。
「沙莉奈のお父さん…、沙莉奈を大切にしてるものね。」
「過保護なだけだよ。」
沙莉奈が照れた笑いを浮かべる。
孤独を感じない沙莉奈を羨ましいと思う。
私は…。
もう一度、メンタリズムが通じ合える人と出会える事があるのだろうか?
片桐さんが私のメンタリズムを理解出来る日が来るのだろうか?
クリスマスイブは孤独を捨て去る為の旅行なのだと何度も自分に言い聞かせた。