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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ



もう泣くのは終わりにしよう。

気持ちを吹っ切るには時間が必要だけど、その時間を忘れる為の仕事を教授が与えてくれる。

ひとまず教授に笑顔を向ければ


「その調子だ。」


と教授が穏やかに笑う。

教授は予めに用意してたと思われる銀行の封筒とこの家のスペアキーを私に託す。

このパターンって…。

銀行の封筒には経費が入ってる。

過去のパターンをわざと繰り返し、私の心の限界を教授は探ってる。

少しばかり胸が痛む。

それでも過去は振り切り未来へ向かわなければ…。

そう考えながら深呼吸をする。


「それじゃ、後は頼むね。」


教授は安心しきった表情で家を出る。

なんだかんだと私を信頼してくれてる。

幾ら心身共に傷付いたとしても突発的に私が馬鹿な事はしないと思ってる。

自発的に冷静になれる精神力の強さを備えてるのがメンタリストだから…。

あれほどまでに憧れたメンタリストへの道を憎みたい気分に陥る。

今や私は1人前のメンタリスト…。

沙莉奈のように自分をさらけ出せる相手ならばともかく、片桐さんのような馬鹿正直になれる人にはメンタリストとして冷静に何事もない振りが出来る。

リビングの壁に掛かる時計を見る。


「9時だったよね。」


今は8時半…。

この家から最寄り駅までは歩いて10分。

その駅から3つ目の駅が大学前の駅。

教授が出してくれたハーブティーのカップを洗い戸締りの確認をして教授の家を出る。


どんな患者だろう?


私の中では女性のイメージ…。

変な男性と教授が私を自分の家で2人きりにはしないという信頼から女性だと推測する。


「長い期間、喪失感と孤独感を持った人…。」


まさかご主人や子供を亡くした不幸な女性ってパターンではないだろうかと考えたりすれば駅へ向かう足取りが必然と重くなる。


私よりも不幸な人をカウンセリングする事で私程度の傷は軽いと教授は思わせたいのだろうか?


新たな出会いに不安はあるものの、カウンセラーとして自分のメンタリズムを試す機会だと気を引き締めて駅へと向かっていた。


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