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メンタリズムな恋…
第17章 先生、未来へ向かおうよ
教授の心の痛みが私に流れ込んで来る。
私を見るその瞳に浮かぶ涙の理由を知るのが怖いとさえ思う。
奥様の事ですか?
やはり教授も未だに喪失感と孤独感を抱えたままなのですか?
これは治らない病気だと受け入れる必要があるのかもしれないと心の何処かで感じる。
受け入れられなければ…。
私は消えてしまう。
「三好君…。」
「はい…。」
「僕の患者を君が診てみないか?」
「教授の患者を私がですか?」
「メンタリストとしてでなくカウンセラーの実習だと思ってくれればいい。」
「カウンセラーの…。」
「その患者と接して、本当に三好君が無理だと判断した時には院に進む道を諦めても構わない。ただ、その患者を君が癒す事で結果的には君の救いになると僕は考えてる。」
「私の…。」
救いになるのだろうか?
前の私なら教授が与えてくれる大きなチャンスに飛び付いた。
今の私には自信が無い。
「9時には駅前までその患者が来るから君が迎えに行ってやって欲しい。この後の僕は教授会のパーティーに出席するから今夜は帰れないと思う。その患者が今は少しばかし身体が不自由な状況で三好君に色々と世話を任せたい。」
「身体が不自由?」
「怪我をしたんだ。そのせいで左腕が全く動かせなくなってる。ひと月もすれば治るから、その間はメンタルケアも含めて三好君が診てやってくれ。」
「教授…。」
「バイト料なら出すよ?」
ニタリと教授がやらしい笑顔を浮かべる。
また理不尽なバイトかと教授に 向かって身構える。
「三好君なら大丈夫だと信じてる。君は僕が受け持つ中で一番優秀な学生なのだから…。」
教授が私の背中を叩く。
過去を忘れて未来へ向かえと私を励ましてくれる。