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メンタリズムな恋…
第18章 先生、先生って呼んで



「寒っ…。」


失敗したなとか考える。

薄い水色のセーターにベージュのロングスカート…。

一応はブーツを履きベージュのコートを着てはいるが手袋やマフラーの防寒具を装備して来なかった自分に嘆きたくなる。

教授が今夜は関東も雪になるかもしれないと言ってたと思い出すだけで自分の軽装にガックリと項垂れて白い息を吐く。

しかも教授が言う患者さんの姿や名前すら聞いてない事まで思い出す。

駅前に来るとしか聞かなかった。

駅だから電車で来るんだよね?

この辺りは住宅街以外に何もなく人通りが比較的に低い地域だから駅前で私を待つ人が居れば、その人が教授の患者という事になるはずだ。

とにかく駅へ…。

アーケードなど無い小さな商店街を抜ければ目的の駅が見えて来る。

ゆっくりと駅全体を見渡せる距離で教授の患者らしき人を探してみる。

トクンと心臓が高鳴る。

寒さからか私の手が震え出す。


「そんな…。」


パニックになり呼吸が一気に荒くなる。


これは酷いよ。

教授…。


怒りと悲しみが私の心に渦巻く。

駅前のベンチに座る人…。

ジーンズにダッフルコートだけの軽装で私と同じように寒さに身を震わせてベンチで踞っている。

その人にゆっくりと近付く。


彼が教授の患者…。


ボサボサの髪に黒縁眼鏡のダサい男に心が痛む。

このまま逃げ出したい衝動に駆られる。

今なら、あの人は私に気付いてない。

頭では何度もそれを考えるのに身体は私の言う事を聞かずにフラフラとその男の前へと歩いてく。

ベンチに座る男が近付く私に気付き勿体付けた仕草でゆっくりと立ち上がる。


「よう…。」


幸之助の第一声は気不味い表情でのその一言だった。


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