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メンタリズムな恋…
第18章 先生、先生って呼んで



パンッ!

と小気味よい音が駅前の広場に広がる。


「いっ…。」


痛いと呟く幸之助が顔を斜めにしたまま私を見る。

私は震え出した自分の手首を握って俯く。

右の手の平が火傷をしたようにジンジンと痺れて痛みと熱を帯びてる。

いきなりの挨拶が平手打ちとか…。

最悪だと思う。

なのに…。


「亜子は相変わらず怖いな。だが自分の身は自分で守れる強さを身に付けたんだな。」


そんな事を言って笑う幸之助が右手だけで私の頭をそっと撫でる。

未だに3歳の子供扱いだと泣きたくなる。


「なんで…?なんで黙って帰ったの?」


怒りから幸之助を責める言葉しか出て来ない。


「なんでって…、俺はアメリカ政府に雇われてるからな。帰るってわかってたろ?」


とぼけた口調に苛立ちしか感じない。


「だったら行く前に一言くらい言ってくれればいいじゃないっ!」

「亜子は片桐と付き合ってんだろ?」


心臓が止まりそうな気がした。


「それは…。」

「その方が亜子にはいいと判断しただけだ。お前はまだ学生だし、俺みたいな男よりも誠実で真面目だけが取り柄の馬鹿なM男の方が幸せになれるぞ。」

「勝手に決めないで…。」

「亜子…。」

「幸之助のせいで片桐さんとも付き合えないよ。幸之助のせいで大学院にも行く気がなくなったよ。全部、幸之助が悪いんだから…。だから…。」


幸之助なんか大嫌いだと言って自分の気持ちを終わらせたいと思うのに…。

私の手は幸之助のダッフルコートを掴んで離すまいと力が籠る。


「全部、俺が悪いか?」


幸之助が穏やかな笑顔を浮かべて聞いて来る。

だけど、その笑顔に私の背筋に冷たいものが流れて嫌な感覚だけを味わう。


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