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メンタリズムな恋…
第18章 先生、先生って呼んで



私の悲痛な叫びを幸之助は受け止める。

ゆっくりと宥めるように私の顔を右手で撫でる。


「居たよ…、少なくとも俺は亜子とずっと居た。お前の存在だけはアメリカでも感じてた。」


穏やかに幸之助が笑う。

それは神の微笑み。

平凡な私を突き放す微笑み…。


「私は何も感じなかった。幸之助との繋がりがわからなかった。幸之助が消えてからは幸之助の痛みも悲しみも何も感じなかった。私には幸之助は傍に居ないのと同じだったんだよ。」

「亜子…。」

「もう…、嫌なの…。あんな思いだけは二度としたくないの。」

「わかってる。少しだけ俺に考えさせろ。」

「考えるって…。」

「今夜はとにかく寝ろ。明日の朝は俺が亜子を起こしてやるって約束してやるから…。」

「絶対に?」

「信用しろ。」


寂しく笑う幸之助が目を伏せる。

はっきり言って信用はない。

だけど必ず約束した事は果たしてくれる。

まだ迷う私の額に幸之助がキスをする。

幸之助の誓い…。

私はそれに縋るしかない。

怖くて堪らない。

幸之助の体温がかなり高い。

怪我のせいで発熱してる。

いつもよりも幸之助の鼓動が速い。

1つ…、2つ…。

いくら数えても私の鼓動と重なる事がない。

泣きたい気分のまま幸之助にしがみつく。

幸之助は少し荒い息で寝息を立てる。

目が覚めたら幸之助が、また居なくなるかもしれないという不安を抱えたままの私だけが眠れない。

だから祈る。

神の子にでなく神に祈る。

幸之助を助けて欲しい…。

私では彼を救えない。

河合教授ですら未だに救えていない。

幸之助は喪失感と孤独感から抜け出せない。

幸之助が救われない限り私も救われない。

だから神に祈り続ける。

結局、私は気温だけでなく、心も身体も寒いと感じるクリスマスを幸之助と過ごすだけだった。


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