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メンタリズムな恋…
第19章 先生、帰ろう
かなり荒い息遣いが聞こえる。
いつの間にか寝てたらしい。
目を擦りながら起きてみれば幸之助はちゃんと私の横に居る。
これは夢じゃない。
幸之助が私の傍に居る。
それだけでも心が穏やかになるはずなのに、幸之助の荒い息に更なる不安が押し寄せる。
「幸之助…?」
眠ってるのか?
意識のない幸之助が、ただ苦しそうに荒い息だけを繰り返す。
前髪が貼り付く幸之助の額から、再び嫌な汗が流れ落ちるのが見える。
左肩を覆う包帯には滲む血が大きな地図を描くように白い包帯を紅く染める。
「幸之助っ!」
医学なんかわからない。
だけど傷口が開き過ぎてるのかもと焦り出す。
「ねえ、起きて…。幸之助っ!」
教授に連絡するべきかを考える。
否…。
救急車を呼ぶべきかもとベッドから出ようとした。
!?
私の腕を幸之助が強く掴む。
「幸之助…?」
意識のない幸之助が私を離すまいと引き寄せる。
「幸之助…?」
「妈…妈…。」
「幸之助…?」
幸之助が呟いた言葉。
ママって言った。
今も幸之助はお母さんを求めてる。
一番初めに幸之助の心に穴を空けた人…。
幸之助がずっと求め続ける人…。
だから幸之助の心が埋まらない。
幸之助の額の汗を拭い、そっと幸之助の頭を膝に乗せて抱き締める。
「居るよ。ここに居るからね…。」
私が病気になると私のお母さんが私にしてくれた事を幸之助にしてあげる。
幸之助が求める温もりを与えれば幸之助の息遣いが穏やかなものへと変わってく。
神の子は聖母の温もりを求め続ける。
私が幸之助の聖母になれるかなんかわからない。
それでも幸之助が常に傍に居たいと思える存在になりたいと願う。