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メンタリズムな恋…
第19章 先生、帰ろう



ゆっくりと幸之助にその人達の感情を理解させてあげるのが私の役目だと思う。

私は教授に選ばれた幸之助のカウンセラー…。

今の私が幸之助に対してどれたけの事をしてあげられるかはわからない。

それでも、やれる事を順番にやるしかない。


「ただ普通に心配してるだけよ。河合教授は心配で堪らないの…。」

「何を?」

「幸之助の事を…。」

「俺?」

「そう、だって家族ってそういうものだからね。」


だから私の実家に幸之助と帰る。


「家族は…。」


もう誰も居ないと幸之助が言葉を詰まらせる。

幸之助の痛みをメンタリズムで感じる。


「帰ろう…。家族のところへ…。」


痛みを振り払い家路を急ぐ。

教授は幸之助が求める父親の温もりを与えようとしてるのに、幸之助がそれを理解出来ないだけだと私には感じる。

神奈川のご両親もきっと同じだろう。

本物の血の繋がりがないからと過剰な反応をしてしまう為に幸之助との間に溝が生まれる。


「だから…、亜子の家族だろ?」


幸之助が拗ねたように呟く。


「違うよ。私の家族であって、幸之助の未来の家族になる家だよ。」

「それは…。」

「それとも私との結婚の約束は無かった事にする?」

「……。」

「私は本気で幸之助と家族になりたいと思ってる。もし幸之助と家族になれるのなら私の家族は幸之助の家族って事になるよ。」

「……。」


いつもの無言。

その無言に戸惑いを感じる。

私が学生だから…。

幸之助の仕事がアメリカだから…。

理由は色々とあるのだと思う。

わかってて私は我が道を行く。


「帰ろう…。」


幸之助は答えない。

答えを今すぐに出す必要はない。

これは私と幸之助との持久戦だと気合いを入れて車を走らせていた。


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