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メンタリズムな恋…
第2章 先生、事件です



「ここに居ろ…。」


先生が呟く。


「はあ!?私がここに居たら先生が着替えに困るだけですよ?」


私の叫びを無視した先生が徐ろにトレーナーを脱ぎ捨てる。


「ひっ!?」


慌てて先生から目を逸らす。

残念ですが男性の着替えなぞ生まれてこの方、お父さんのしか見た事がない。


「チッ…。」


先生が舌打ちする。


「何かありましたか?」


先生に背を向けたまま聞いてみる。


「ウェストが緩い。ベルトがない。脚が短いのか丈が短い。全然サイズが合ってない。」


ブツブツと文句が聞こえて来る。


「しょうがないじゃないですか。先生の為に仕立てたスーツじゃないのですから…。」

「ヘアジェルかなんかないか?」

「スプレータイプならありますよ。」


バッグから携帯用ヘアスプレーを取り出し背中越しに居る先生に渡す。

プシュッとヘアスプレーを使う音がする。


「これでいいか?」


そう聞かれて恐る恐ると振り返る。

時間が止まったような気がした。

ズボンにYシャツだけを着ただけの先生…。

だけど、そこには間違いなくメンタリスト大和 幸之助の姿がある。

ダサい眼鏡はYシャツの胸ポケットに仕舞い髪を搔き上げて晒された顔はまさに美男子というに相応しい端正な造りをしてる。

そして数多の女性を虜にしたあの流し目で見下ろすように私を見る。


「せ…、んせい?」

「ん?」

「さっきと同じ人間ですよね?」


私はポカンと間抜けに口を開けたまま先生に聞く。


「?」


先生は何を言ってるんだと不思議そうに私を見る。

これが本物のメンタリスト大和 幸之助だと更に確信をした私は必ず奈々ちゃんが見つかると先生に向かってニンマリとほくそ笑んでいた。


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