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メンタリズムな恋…
第3章 先生、解決しました
誰もが大和 幸之助を振り返る。
着替えの済んだ先生にお供をしてお仏壇のあった小さな部屋から搜索の人達が居る大きな部屋へと移動するだけなのに私達の横をすり抜ける捜査官達が必ず立ち止まり先生を見る。
「あれがFBIの大和捜査官か?」
そんなヒソヒソ話も聞こえて来る。
それもそのはずだと思う。
はっきり言って丈の短いズボンに袖を捲ったYシャツを着てるだけのネクタイすらしてない、まだまだみっともない姿の先生なのに、先程のボロ雑巾とは大違いで胸を張り堂々と、しかも早速と歩く先生の姿はまさに出来る男の見本である。
「片桐さんっ!」
丁度、玄関を出ようとする片桐さんを見つけた。
「着替えは終わったのですね。」
爽やかな笑顔で片桐さんが言う。
「ありがとうございます。」
頭なんか下げそうにない先生の代わりに助手である私が頭を下げてあげる。
「これを付けてて下さい。」
片桐さんから警察の関係者だというIDカードを受け取った。
奈々ちゃんの搜索に身元のわからない人間がウロウロとされると迷惑になる。
「今から搜索に向かいますが一緒に行きますか?」
片桐さんにそう聞かれて即座に
「行きますっ!」
と答えたのに
「行かない…。」
と先生が呟く。
「先生っ!なんで行かないんですか!?」
「……。」
かなり不機嫌な顔で私を睨んで来る。
髪を上げて表情がはっきりとすると、その目の鋭さにドキリとして、それ以上は何も言えなくなる。
「もう…、いいよ。先生は探す気がないんですよね。ならば私だけ行って来ます。」
先生の車の鍵は私が取り上げてる。
この田舎町からは車が無ければ何処にも行けない。
先生を見捨てるようにして片桐さんと奈々ちゃんの家を飛び出した。
ワゴン車に搜索の捜査官達が乗り込み私は片桐さんの車に乗せて貰う事にする。