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第3章 先生、解決しました

「先生っ！早くっ！」


私の声で先生が救急車に向かって一気に走る。

奈々ちゃんのお母さんも慌てて先生を追いかける。

暗闇の中でテレビカメラ用のライトやカメラのフラッシュが眩い光を放つ中を先生はあっという間に救急車の中へと乗り込んだ。


「三好さんっ！」


片桐さんの声がする。


「片桐さん、救急車の周りの人をどけてっ！」


私はただ叫び続ける。

今は奈々ちゃんを病院に一秒でも早く移動させる事が優先だ。


「どいて下さいっ！」


何度もそう叫び救急車の方へと向かう。


「発見者の方ですか？」

「発見した状況は？」

「ＦＢＩが協力したって噂は事実ですか？」


リポーターらしき人が口々に言葉を浴びせて来る。


「邪魔なんだってばっ！」


キレてた。

私だけがいつまで経っても救急車のところまで辿り着けないという苛立ち。


『救急車が発進します。』


救急車からアナウンスが流れ出す。

人集りがそのアナウンスに少しだけバラけるけどその人混みで私は反対側へと流される。


「先生っ！」


走り出す救急車に向かって叫んだ。

私だけが取り残される。

また背筋に冷たいものが流れ出す。


彼から逸れちゃいけない…。


その感覚だけが強くなる。


「先生っ！」


救急車はサイレン音を低くして私の前から立ち去ってしまう。


「状況の説明は後日行いますっ！」


警察が奈々ちゃんの発見状況の説明は明日になると繰り返す。

その人混みの中をフラフラと彷徨う。

私だけが私じゃない感覚を感じて不安の沼へと堕ちて行く。

奈々ちゃんは助かった。

なのに私は怯えてる。

先生っ！

姿の見えないあの人を探して人混みの中で踞る。

このまま自分がおかしくなるのではないかと恐怖の中でひたすらあの人だけを探し続けた。