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メンタリズムな恋…
第5章 先生、何処に行ったの?
「……。」
今回は私が無言になる。
横浜までわざわざやって来た。
先生は黙ったまま車から降りると中華街の片隅にある小さな古いお店に入ってく。
行列が出来る様な大きく派手な店ではなく、裏路地にひっそりと佇む小さな店。
看板は中国語で読めないという店構えから本格的なお店である事は間違いないと思う。
実際に中に入れば真っ赤なチャイナドレスを着た女性から
「お2人?あっちのテーブルにどぞ…。」
と明らかにイントネーションのおかしい日本語で言われる。
厨房からは鍋を振る音がする。
会話は全て中国語…。
普通のお客様なら敬遠する類いのお店で表情一つ変えない先生が
「ラーメン…。」
とだけ呟く。
ラーメンと言えば通じるのだろう。
メニューには私が読めない言葉が並んでる。
「私もラーメンを…。」
私も先生の真似をする。
「ラーメンが2つ…。他には?」
チャイナドレスのお姉さんがたったそれだけかと語気を強くして聞いて来る。
先生は黙ったままだから私は下を向いて俯く。
目を合わせたら訳のわからない物を注文させられそうだと思う。
この場所で私にわかるのは上海という文字だけ…。
お姉さんがテーブルから離れるのを確認すると即座に先生に聞いてみる。
「ここ、上海料理のお店ですよね?」
「ああ…。」
それがなんだと面倒臭そうに先生は答える。
何故、普通のラーメン屋でなく上海料理のお店でラーメンなのかが理解出来ない。
しかも、かなりのマニアックなお店。
ここのラーメンはそんなに特別なのかと考える。
もしかしたら一般人の知らない隠れ名店というお店なのかもしれないと思うとたかがラーメンにワクワクとして期待する。