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メンタリズムな恋…
第5章 先生、何処に行ったの?
先生は黙ったまま答えない。
その沈黙が怖くなる。
私はメンタリストじゃないから…。
先生の気持ちなんかわからない。
そっと先生の手が私の頭に乗せられる。
「今度、一緒に食べに行くか?」
ゆっくりと頭を撫でて聞いて来る。
「行きますよ。私は先生の助手だもの。」
「わかった…。」
先生はそれだけを言うといつものように助手席で膝を抱えて小さく踞る。
小さな小さな魔法の鳥…。
その鳥を手に入れた魔法少女…。
私は先生の助手として認めて貰えた。
それだけで今は充分だと満足する。
「だから先生…、もう黙って消えたりとかしないで下さい。」
聞いてるか聞いてないかわからないボロ雑巾に言葉を投げ掛ける。
「亜子が帰ったからだろ?」
そんな呟きが返って来る。
笑うしかない。
ラーメン、ラーメンとしつこく言い続けたボロ雑巾はこの件では私が帰ったせいだと譲らない。
「だから帰ってないってば…。」
「俺は帰ったと判断した。」
「メンタリストでしょ?私の事で勝手な判断をしないで下さい。」
「メンタリストは万能じゃない。」
「でも先生にならわかるでしょ?」
「俺には何にもわかんねえよ。」
口喧嘩をしながら高速道路をひた走る。
片桐さんの時のようなスムーズな会話じゃないけれど私はこの口喧嘩が嫌だとは感じない。
「メンタリストなら察して下さい。」
「亜子の事を?」
「先生を見失ったら私は先生の助手をクビになるんだから…。」
「……。」
先生がまた窓の方にそっぽを向く。
「聞いてますか?」
「聞いてるよ。」
ちゃんと返事が返って来る。
先生の言葉1つで喜びを感じる自分がわかる。
いつか…。
この人が見てる世界を私も見れるようになりたい。
今はふらふらと消える幻のような先生を追いかけるだけで必死になるしかなかった。