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メンタリズムな恋…
第7章 先生、逃げられないよ
先生は答えない。
その代わりに片桐さんが
「三好さんを保護します。」
と答えて階段を降りて来る。
「私を…、保護って…?」
「大和さんは三好さんに説明するつもりがないみたいなので…。」
「部屋を荒らした犯人を警察も先生も知ってたって事なの?」
片桐さんと話しながら先生を責める言葉を吐く。
先生は片桐さんを睨んだまま私には答えない。
「警察は犯人を特定してたわけじゃありません。あくまでも大和さんから三好さんに危険が及ぶ可能性があると通報を受けただけです。」
片桐さんが状況を説明する。
「通報?」
「残念ながら日本の警察は可能性だけでは捜査などの行動をする事が認められてません。」
昨今のストーカー事件で警察は被害が出なければ動けないと相談に来た被害者を追い返し、最悪の事件に発展したケースが少なくない。
被害が認められない限り警察は何も出来ない。
だから片桐さんは間違ってない。
それでも先生は片桐さんを睨み私から遠ざけようとしてる。
「今更、保護か?亜子にも見張りの警護を付けて自由を奪うのが日本の警察のやり方か?」
「保護はアメリカでもやる事ですよ。」
階段を一段づつ降りて来る片桐さんに対して、じりじりと先生が私を背中に隠しながら後退する。
「亜子の保護は俺と河合教授がやる。」
「それは、もう無理です。貴方の言う通り事件は起きてしまった。例えFBIでも貴方も河合教授も民間人に変わりはない。」
「それでも亜子は俺達が守る。」
「彼女の過去を隠す為にですか?」
片桐さんが先生を責める。
「彼女には知る権利があります。被害者はあくまでも彼女です。」
片桐さんの言葉に唖然とする。
私は被害者…。
私の過去…。
先生も片桐さんも知ってて何も教えてくれない。
もう自分が何を信じて良いかわからずに先生から逃げ出すように階段を降りてリビングに逃げ込んだ。