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ヘタレ男の夏の夜
第1章 ヘタレ男の夏の夜
19時前ーーー。

「しょーちゃん、花火始まるよ。」

俺たちは人混みの中、二人で並んで立っていた。

最初の一発目が上がってーー…。

「キレーだな。」

しょーちゃんが呟く。
俺はそんなしょーちゃんの横顔をチラっと見ていた。


ガキの頃より少しだけ大人びたけど童顔なしょーちゃんは綺麗な顔をしている。

好きだな。
あと数ヶ月で離れなきゃいけない。



「…しょーちゃん、好き。」


ドドンーーーっと鳴り響く花火に俺の声はかき消された。


「何か言った?」

「…何も言ってねえ。」




打ち上げ花火が終わって、俺たちは、本部にいる親父たちにもらった線香花火を神社の隅でやっていた。


「東京行ったら、帰ってこねえの?」

「…まあ、向こうで仕事もするだろうし、当分は帰るつもりねえかな。」

「ふーん。そうなんだ。」

「しょーちゃんだって、親父さんの後継いで板前なるんだろ。」

「まあな……もう、会うことねえのかな、俺たち。」


線香花火は短い寿命を懸命に光放ち、そしてーー…。


儚く散るーー…。


「次、こうやって会えたら…。」



ーーー好きだって言いたい。



「お前の作る飯、楽しみにしてる。」







8ヶ月後、卒業と同時に東京へ引っ越し、しょーちゃんはそれまで誰とも付き合うことなかったのに、彼女ができた。

それから約10年一度も帰ることはなかった。
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