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女教師と男子生徒、許されざる愛の果てに~シークレットガーデン
第5章 禁域
背後でドアが閉まり、心優は小さな息をついた。ちらりと振り返り、想いを振り切るように首を振り、歩き出す。
結局、長瀬のアパートを出たのはもう陽が落ちてからのことで、空は既にすっかり暮れなずんでいた。パープルの絨毯をひろげ光り輝くビーズ刺繍を丹念に施していったような夜空は眺めていて飽きない。
少し歩いて空を見てはまた歩きと繰り返していたので、あまり進まない。本音はたった今別れたばかりの恋人から離れがたいのだとは自分でも判っていた。
火照っているのは何も頬だけではない。彼に愛された身体そのものがうっすらと微熱を帯びている。両頬を手のひらでそっと押さえ、心優はゆっくりと歩き出した。
熱を帯びた頬に少しひんやりとした夜風が心地良かった。曲がり角まで来たときのことだ。集合住宅を取り囲むコンクリート塀の向こうから、唐突にヌッと人影が現れた。あまりのことに、心優は小さな悲鳴を上げた。
まるで溜まった闇が凝(こご)って人の形を取ったのではないかと思うほど、その影は禍々しく見えた。やがて、薄闇に慣れた瞳が映し出したのは背の高い男だった。
「前橋先生」
「本井先生、どうして―」
心優は茫然として呟いた。愕きがあまりに大きすぎて、本井がどうして急にこんな場所に現れたのか考えることもできなかった。
結局、長瀬のアパートを出たのはもう陽が落ちてからのことで、空は既にすっかり暮れなずんでいた。パープルの絨毯をひろげ光り輝くビーズ刺繍を丹念に施していったような夜空は眺めていて飽きない。
少し歩いて空を見てはまた歩きと繰り返していたので、あまり進まない。本音はたった今別れたばかりの恋人から離れがたいのだとは自分でも判っていた。
火照っているのは何も頬だけではない。彼に愛された身体そのものがうっすらと微熱を帯びている。両頬を手のひらでそっと押さえ、心優はゆっくりと歩き出した。
熱を帯びた頬に少しひんやりとした夜風が心地良かった。曲がり角まで来たときのことだ。集合住宅を取り囲むコンクリート塀の向こうから、唐突にヌッと人影が現れた。あまりのことに、心優は小さな悲鳴を上げた。
まるで溜まった闇が凝(こご)って人の形を取ったのではないかと思うほど、その影は禍々しく見えた。やがて、薄闇に慣れた瞳が映し出したのは背の高い男だった。
「前橋先生」
「本井先生、どうして―」
心優は茫然として呟いた。愕きがあまりに大きすぎて、本井がどうして急にこんな場所に現れたのか考えることもできなかった。