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独占欲に捕らわれて
第8章 独占欲に捕らわれて
「乾杯」
ふたりはグラスを目の高さまで持ってくると、乾杯するように小さく傾ける。それぞれひと口呑んでグラスを置くと、千聖は口を開いた。
「詳しいことははしょりながら話すけど、1ヶ月近く前に、身内が借金をしたの」
「なんだって?」
義和は眉間にシワを寄せる。

「お母さんから連絡が来て知ったんだけど……、私が払える額だったの。それでも、好きじゃない家族のために貯金切り崩すのって嫌だなって悩んでた。そしたら紅玲……この前話した、合コンで私にしつこく構ってきた男が通りがかってね。彼、株とかFXとかで生計立ててるって言ってたからお金あると思って、相談を持ちかけたの」
千聖は小さく息を吐き、ダーティーマザーで口を湿らせる。

「それで、その紅玲くんはなんて?」
「利用されると分かっていながら、私の話を聞いてくれたのよ。それで、契約をした」
「それは、どんな?」
義和の目を見ればそこに好奇の類はなく、千聖は心の中で彼の存在に感謝する。

「紅玲が借金を肩代わりする代わりに、1ヶ月間セフレになるって」
千聖の言葉に、義和は目を丸くする。
「よく承諾したね。若い子嫌いの君が」
「それだけお金を出すのが嫌だったのよ。実際に寝てみたら、若い子にしてはセックス上手かったわ」
「千聖ちゃんが言うなんて、よっぽどなんだろうね。なるほど、彼に呼び出されて私と会えなかったのか」
義和は納得したように大きく頷く。

「そういうこと。最初の1週間はそんなに呼ばれなかったんだけど、2週間目はほぼ毎日呼び出されてたわ」
「それは……随分と躯に負担がかかったんじゃないのかい?」
義和は心配そうに千聖を見つめる。
「大丈夫、ホテルに行く回数は少なかったから。紅玲が言うことには、セックスするだけがセフレじゃないって。だから、ご飯だけで終わることが大半だったんじゃないかしら」
「へぇ、意外に紳士なんだね」
義和は感心したように言いながら、腕を組む。
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