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独占欲に捕らわれて
第4章 予想外
「もう……マジでありえない……」
メールを全て読み終えた千聖は、テーブルに突っ伏した。そのはずみで、上に乗っているチーズベリーのアイスクリームがテーブルの上に落ちてしまった。
「うっわ、最悪……」
千聖が紙ナプキンを取りに行こうと立ち上がると、見覚えのある人物と目が合った。

「あっれ? チサちゃん?」
「げ……」
この前の合コンでやたらと千聖に構ってきた紅玲だ。手にはチョコとバニラのダブルアイスクリームを持っている。
「あーらら、落としちゃったの? ちょっとこれ持ってて」
「え? ちょっと……」
紅玲は自分が持っているアイスクリームを千聖に押し付けると、どこかへ消えてしまった。
「どうしろっていうのよ……」
千聖は持たされたアイスクリームと紅玲が消えた方向を交互に見る。

紅玲はすぐに戻ってきた。手にはふたつのアイスカップと布巾。
「おまたせー。はい、これでいいのかな?」
千聖の前に置かれたアイスカップには、チーズベリーのアイスが入っている。驚いて顔を上げると、紅玲は空のアイスカップに千聖が落としたアイスクリームを布巾で滑らせ、綺麗に拭いていた。

「ありがとう……」
混乱した思考で出てきた第一声は、お礼の言葉。これには彼を毛嫌いしている千聖自身も驚いた。
「ふふっ、どういたしまして。アイス、持っててくれてありがと」
紅玲は千聖の向かいに座ると、千聖からアイスクリームを受け取り、ペロリとひと舐めする。

「これ、いくらだっけ?」
「いいよ、それくらい。それより、チーズベリーでよかった?」
紅玲は片手で財布を取り出す千聖を制止すると、千聖の前に置いたアイスクリームを見ながら言う。
「えぇ、あってるけど……。本当にいいの?」
「いいって。高いものじゃないし。それより、はやく食べないと溶けちゃうよ?」
「あ……」
紅玲に指摘されてアイスクリームを見ると、バニラアイスはだいぶ溶けていた。

「そうね……、ごちそうさま」
千聖は落ち着かない気持ちでアイスクリームを食べ始める。
(はぁ、気まずい……。どうしたらいいんだろ? もう、色々と……)
母親からのメールと先程のアイスクリーム騒動で混乱しきった千聖は、天井からぶら下がる新商品のPOPを睨んだ。
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