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独占欲に捕らわれて
第5章 返済
翌朝8時、目覚まし時計で起きた千聖は、ベッドから出て躯を伸ばす。
「くぅ〜……はぁ……まだ寝てたかった……」
朝からため息をつくと、千聖はトースターで食パンを2枚セットしてレバーを下げた。もう1度寝室に戻って着替えを取ると、シャワーを浴びに浴室へ行く。

眠気覚ましに熱めのシャワーを浴びながら、今日の予定をぼんやりとした頭で整理していく。
(アイツと駅で会ったら、一緒に地元に行く。それから……、私は実家で名刺とかもらったりなんだりして、その間にアイツはどこかで待ってるって言うけど……。ファミレスに待たせるしかないか……。合流場所も、そこでいいとして……。その後、アイツがかわりに借金返しに行ってくれる……)

千聖はシャワーを止めて、上を向く。
「そのあとのことは、まぁいっか……」
ため息交じりに言うと、浴室から出た。

台所に行けば、トースターからはこんがり焦げ目のついたパンが顔を出している。レタスとハム、スライスチーズをはさんでサンドイッチの出来上がりだ。
千聖はミルクティーを淹れると、リビングでテレビを見ながらサンドイッチをかじる。
この時間はどのチャンネルもニュース番組で、千聖にとっては退屈でしかない。一通りチャンネルを回すと、最初に見ていたニュース番組に落ち着く。

「なんにもないのね……」
千聖はテレビに映るオリンピック候補選手に、気だるげな目線を投げかけながらぽつりとつぶやく。

朝食を終わらせると、千聖は母親に今から向かうことをメールで伝え、部屋を出た。
休日の朝でも、都会は忙しない。神経質そうにスマホを見るサラリーマンとすれ違いながら、千聖は駅へ向かう。もう少しで駅に着くというところで、背後から誰かに肩を叩かれる。小さな悲鳴を上げて振り返ると、紅玲がいた。手には赤と黒で統一された売れないバンドマンのような服装に似合わない、銀色の小さなアタッシェケース。
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